24.05.01
母の味を伝える日
料理研究家 野口真紀さんの
「食べたい味、伝えたい味」
「母の日が代々、母の味を伝える日になればいいと思う」と話す料理研究家の野口真紀さんは、2人のお子さんのお母さん。「願望も込めて、子どもがこんなものを作ってくれたらうれしい」と挙げてくれたのは五目ちらし寿司。野口さんにとって、ひな祭り、端午の節句はもちろん、お祝い事の度に繰り返し作ってきた家族の味だ。お寿司に手間がかかる分、あとは簡単・豪華なレシピを。皆が大好きなメニューから、和風ローストビーフと夏野菜の揚げ浸しを紹介します。
最初はつけ汁に最低1時間は漬けておきたい、「和風ローストビーフ」から始めましょう。
和風ローストビーフ
◎材料(4人分)
牛肉 300g
塩 小さじ1
▼つけ汁
りんご(すりおろし) 1/2個
生姜(すりおろし) 2かけ
にんにく(すりおろし) 1かけ
醤油 1/4カップ
胡椒 適宜
油 大さじ1
クレソン 適宜
◎作り方
1.牛肉は塩をして室温で30分ほどおく。
2.りんご、生姜、ニンニクをすりおろし、醤油、胡椒と共にファスナー付き保存袋に入れる。
「すりおろすだけの簡単ダレです」
3.フライパンに油を熱し、最初は強火で1の牛肉の表面をしっかり焼き付ける。
「焦げ目がつけ汁の旨みになります」
4.180度のオーブンで10分ほど焼き、30分ほど休ませる。
「肉が薄い場合はオーブンに入れなくてもいいですよ」
5.2に入れてつけ汁をまぶし、1時間以上おいて味をなじませる。
「つける時間はできれば3時間以上が理想です」
6.肉を取り出し、好みの厚さにスライスする。ほどよいローズピンクの焼き上がり。
7.器にたっぷりのクレソンを盛り、つけ汁をかける。
次は肉を漬けている間に、「五目ちらし寿司」を作りましょう!
五目ちらし寿司
◎材料(4人分)
<酢飯>
炊き立てごはん 2合分
すし酢 大さじ4
<甘酢れんこん>
れんこん(細めのもの) 5㎝
すし酢 大さじ1
酢 大さじ3
<ごぼう、にんじん煮>
ごぼう 1本
にんじん 4㎝
▼煮汁
だし汁 1/2カップ
酒 大さじ2
砂糖 大さじ1
醤油 大さじ1
<しいたけ、かんぴょう煮>
干ししいたけ 4枚
かんぴょう 10g
※干ししいたけは1カップの水で冷蔵庫で一晩かけてもどす。
※かんぴょうは水で洗い、塩で揉んでから熱湯でさっと茹でる。
▼煮汁
だし汁 1カップ
干ししいたけのもどし汁 1/2カップ
醤油 大さじ3
みりん 大さじ1
砂糖 大さじ3
<錦糸卵>
卵 2個
塩 少々
砂糖 小さじ2
油 少々
炒りごま(軽く炒り直す) 大さじ2
絹さや(塩ゆで)
いくら お好み
◎作り方
<甘酢れんこん>
1.れんこんは皮をむいて薄切りにし、熱湯でさっとゆでてざるにあげる。
2.ファスナー付き保存袋にすし酢、酢を入れ、1を入れて30分ほどつける。
<ごぼう、にんじん煮>
1.ごぼうはささがきにして水にさらす。にんじんは細切りにする。
2.鍋に煮汁の材料を煮立ててごぼうとにんじんを入れ、やわらかくなるまで煮る。
<しいたけ、かんぴょう煮>
1.しいたけを細切り、かんぴょうを3㎝幅に切る。
2.鍋に煮汁の材料を煮立ててしいたけ、かんぴょうを入れ、汁気がなくなるまで煮る。
<錦糸卵>
1.ボウルに卵、塩、砂糖を入れて混ぜる。
2.フライパンに油を熱し、1を流し入れて全体に広げる。
火が通り、表面が乾いてきたらひっくり返す。
「半熟のうちにひっくり返そうとすると、きれいにいかないので、よく火を通すこと。あと薄く焼くために大きなフライパンを使ってくださいね」
3.卵を縦に4等分し(端は切り落とす)、細切りにする。
<酢飯>
1.炊き立てのご飯にすし酢を混ぜる。大きめの飯台を使えば、団扇であおがなくても蒸気が飛ぶ。
「レンジでチンしたご飯だと中に酢が入っていかないので、ここは炊き立てを。すし酢は好みのものをみつけておくと、お寿司が気軽に作れるようになりますよ」
出来上がった材料を盛り付け、五目ちらし寿司を組み立てていきます。
1.<ごぼう、にんじん煮><しいたけ、かんぴょう煮>の汁気を切り、炒りごまと共にすし飯にさっくりと混ぜる。
「すし飯が温かいうちに粗熱のとれた具材と混ぜると、お互いがよく馴染みます」
2.錦糸卵を全体に散らし、甘酢れんこんを並べる。「かわいく仕上げるには、細めのれんこんを選んでくださいね」
3.いくら、絹さやを彩りよくあしらって出来上がり。
3品目は「カラフル野菜の揚げ浸し」を作りましょう。
◎材料(4人分)
なす 2本
かぼちゃ 1/6個
ピーマン 3個
いんげん 10本
※そのほかパプリカ、オクラなど好みの夏野菜で。
▼つけ汁
めんつゆ(3倍濃縮) 1/3カップ
水 1/3カップ
生姜(すりおろし) 2かけ
酢 大さじ1
揚げ油 適宜
◎作り方
1.なすは縦半分に切り、斜めに細く切り込みを入れる。
「おもてなし料理だから、少し手をかけて簡単な飾り切りにも挑戦してみましょう」
2.かぼちゃは5㎜幅に切る。ピーマンは半分に切って種を取る。
※オクラを使う場合は、がくをくるりと手で取り、楊枝で穴を開ける。
3.つけ汁の材料をバットに入れる。
「めんつゆに生姜が入るとぐっとおいしくなりますよ。お酢も少々」
4.フライパンに油を数センチの深さに注ぎ、なすといんげんから揚げ、揚げたてを3のつけ汁に入れる。かぼちゃとピーマンも同様に。
「野菜はよく火が通っていた方がおいしい。色づくくらいまで揚げてください」
5.冷蔵庫で冷やし、器に盛り付けていただく。
色鮮やかな、3品が完成!
伝えたい味
「この五目ちらし寿司は、祖母の味なんです」
と野口さん。高級な素材は使わないけれど、野菜の混ぜ寿司の中でも、最も手の込んだ最上格の一品。ごぼう、にんじん、干ししいたけとかんぴょうの滋味がさわやかな酢飯と一緒になって、香ばしいごまの食感も楽しく、いくらでも食べられる。「今、こういう味を知っている子がどのくらいいるかしら」。手軽で華やかでおいしいものは世の中に溢れているけれど、素朴な食材に手をかけて、特別なものにする魔法を忘れてほしくない。「だから私にとっては作ってもらいたいし、伝えたい味なんです」
母の背中
「子どもたちには小さい頃から包丁を持たせてきたし、器やグラスも大人と同じものを使ってきました」一緒に台所に立ち、食卓を囲む日々を重ねて、母が何を大切にし、何を譲れないかは言葉にしなくても伝わっているはずという確信がある。職業柄、家が仕事場でもあり、全力投球する姿を見せてきたという自負も。
大学生と中学生になった子どもたちは、今も母の日には欠かさず、花と手紙を贈ってくれる。それは母への応援歌であり、エネルギーの素にもなっている。「子どもたちは私を信頼してくれているし、リスペクトしてくれている。母の背中を見せてきたつもりだから、よくわかってくれているなとうれしく思います」
三世代で祝う日
三世代にわたって受け継がれてきた味は、野口さんの料理家としての土台にもなっている。棚から取り出し、見せてくれたのはボロボロになった4冊の著書。ここには母と祖母から受け継いだ味がレシピとして残されている。お寿司はもちろん、ハンバーグ、なすとひき肉の炒めものなど、家族の味の大切な記録であり、今もしょっちゅうめくる現役のレシピばかり。
そんな野口さんにとって、母の日は母娘の絆を再確認する日。今年75歳になるお母様とは毎年、二人でお寿司屋さんへ行き、お酒を楽しみながら母娘の時間を過ごすのが恒例なのだそう。
「母の日を大事にするって、いいことだなと思うんです」
娘であり、母である野口さんにとって、母の日は母へのリスペクトを伝え、受け取る日。家族皆でお母さんが伝えてくれたことへの感謝を伝え合う日なのかもしれない。
Photo:太田太朗
Interview / text:松本あかね
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野口 真紀(のぐち まき)さん
料理研究家。作りやすくおいしい家庭料理が読者の熱い信頼を集め、自ら手がけるスタイリングにも定評あり。料理教室は順番待ちの大人気。著書に『ストウブで一肉一菜』(誠文堂新光社)、『きょう作りたいおかず 簡単&美味な300品』(主婦と生活社)ほか多数。
https://www.instagram.com/makinoguchi1022/